列車で南から北へ向かっていたある時、窓の外に見えた一列に並んだ海線の風車に目をひきつけられました。その時停車した思い出深い駅が後龍駅でした。窓越しに見える絶え間なく回転する海線の風車と大海原、青と白が織り成すその風景に目を奪われました。苗栗の海線に、私はある種の熱狂的な憧れを抱いていました。
苗栗の海線は幻想的で、都会に住みながらも幼少期を海辺で過ごした私にとっては、非常に魅力的でした。今回の海線の旅は私のために企画されたのではないかとに感じるほどに、海の上の風車や海岸公園の景色は私の空想を膨らませ、優しい海風に吹かれたびに、この海の香りを全身で感じたいと足を止めるのでした。
苗栗の海線はロマンチックな風車の旅。海の美しさに抱かれながら、ゆっくりと散策を楽しみましょう。苗栗慢魚海岸(苗栗スローフィッシュビーチ)は、のんびりとしたこの場所ならではのリズムがあります。ここの海岸がサーフィンにも最適な海であることや、新鮮な海産物の競りの様子にも驚きました。金紙の工場や宮崎アニメに出てくるような神秘的な子母トンネルなど、何度訪れても心を惹きつける場所です。
タイトなスケジュールは要りません。のんびりと苗栗の海線に足を踏み入れ、慢魚海岸がもたらす心揺さぶる旅へと出かけましょう!
慢魚海岸の旅の始まりは崎頂駅から。
崎頂駅は、苗栗方面へ向かう下りの列車の最初の停車駅です。小さな駅ですが、たくさんの隠れ観光スポットがあります。1番線のホームに降りて、駅を出て左に向かうと子母トンネルに行くことができます。もし海が見たい場合は、2番線のホームの後ろから駅を出ましょう。
青と白に塗られたプラットフォーム、中には灰色の壁に木造の椅子、昔ながらの素朴な雰囲気が漂います。プラットフォームにこのような雨風をしのげる空間があるなんてすごく素敵。
子母トンネルへ向かう途中にある展望台、ここからは遠く海をゆく船舶、見上げる空には雲を抜けていく戦闘機ミラージュ2000、そして走り去る列車と3つの異なる交通機関を一度に見ることができる場所です。
さらに、ここは夕日を見るのにも最適な場所。左側の風車は冬の日没ポイントで、右側の風車は夏の日没ポイントです。左から右へちょうど1年分の間隔があり、ここで1年間四季を通して夕日を撮影するのも面白いでしょう。
前回崎頂駅を訪れたのは4年前、今回久しぶりに訪れると、海岸線には20基以上の風車が新たに建てられていて、その数に驚きました。海上に立ち並ぶ風車の光景に、風車ファンの私はうっとりです。特に海上の風車は海に浮かんでいるような神秘的な佇まいで、本来の美しい海をさらに幻想的な雰囲気にしています。
崎頂子母トンネルは、2つのトンネルがあることから名付けられました。崎頂1号トンネルは約130.78メートル、2号トンネルは約67.84メートル、2つのトンネルを隔てる距離は50メートルです。長いトンネルと短いトンネルがあるため子母トンネルと呼ばれています。
トンネルの入り口はとても広く、トンネルの向こう側に見える緑の景色は、静謐で美しく、一般的なトンネルの暗い鬱蒼とした雰囲気とは全く異なります。
トンネルの入り口にあるいくつかの穴、これは第二次世界大戦で連合国の飛行機が台湾上空から列車を追撃した際の弾痕です。先ほど見た防空壕と相まって、戦争のない今の世界に生きている自分の幸せを感じます。
カメラの角度を高くしてみると、緑の葉が作る屋根が太陽の光を受けて輝き、まるで森の中にいるような美しさです。宮崎駿監督のトトロの映画のように、トンネルからトトロが飛び出してきそう。
この木製の階段も緑に囲まれていて、まるで森を散策しているような感覚に。
竹南の崎頂駅周辺には他にもたくさんのスポットがあります。地図を見ながら探検してみるのもおすすめです。
海風を軽く感じながら、冬の朝日の輝きを数え、遠くで回る風車の旋律を聞いていると、ただじっとこの一瞬のロマンスを抱きしめたくなります。
崎頂駅には穏やかな海岸の景色と、木々に囲まれた夢幻的な子母トンネル、そして風車のある美しい風景があります。私が言いたいことは一つだけ、ここは、本当に美しい。
媽祖様は海線に暮らす人々を護る神聖な神です。いろいろな媽祖廟を訪れたことがありますが、竹南の龍鳳宮には世界最大の媽祖像があり、とても印象に残っています。巨大な媽祖像が寺院の上にそびえ立っているのが遠くからでも見えます。その穏やかで慈悲深いお姿は、海線のすべてを見守っているかのようです。非常に大きな神像であるため、この日は修復作業を行っている様子も見ることができました。媽祖様のお姿を後世に残す大変な作業です。
天上聖母媽祖様をお祀りする龍鳳宮は、中港慈裕宮と合わせて内外媽祖として知られています。後殿にある天上聖母の像は高さ136台尺(およそ44.8メートル)、12階建てで、東南アジアで最も大きい天上聖母像です。
媽祖様をお祀りしている龍鳳宮は、中港慈裕宮と共に内外媽祖として知られています。
龍鳳宮は外媽祖で、町の外での諸々を主に管理しています。神々の世界でも仕事内容は非常に細かく分かれているのだそう。ガイドさんの説明を聞きながら、神々に対してより親近感を抱くことができました。
龍鳳宮は清朝の道光16年に建立され、約400年以上の歴史があります。寺院には興味深い意匠の彫刻もあります。言い伝えによれば、鄭成功がオランダ人を追放した後、オランダ人を柱に彫ったとされるものもあります。これは敬う意味ではなく、懲罰の象徴だと言われています。。
門の石獅子の彫刻は非常に精巧で、言い伝えによれば、石獅子の口の中の石は後から置かれたのではなく、刀で一刀一刀丁寧に彫り出されたもので、富の象徴なのだそう。
媽祖像の一番高い場所(12階建ての高さ)には展望台があり、龍鳳漁港や台湾海峡を望むことができます。竹南を訪れる際は、この神聖な龍鳳宮に立ち寄るのをお忘れなく。
- 住所|苗栗県竹南鎮龍鳳里42号
龍鳳宮と共に内外媽祖として知られる慈裕宮、その歴史は非常に古く、廟内の彫刻は精巧で繊細です。慈裕宮は苗栗県の古蹟に指定されており、地元の人々にとって最も重要な信仰の対象となっています。
- 住所|苗栗市竹南区中美里民生路7号
陳家古厝のそばに紙銭がずらりと干してあります。私はこれまで紙銭がこんなに大胆に「日光浴」している姿を見たことがありませんでした。竹南は金色中港街と呼ばれ、かつて紙銭産業の中心地でした。全盛期には産業価値が10億元にも達し、村のほぼ全ての住民が紙銭業に従事していました。80年以上の歴史を持つ老舗の紙銭工場は今もなお手作業で神を印刷し紙銭を作っています。
紙銭は金ぴかな場所で作られているものだと思っていましたが、その工場は狭い路地を抜けた場所にある小さな古い家の中にこっそりとありました。
入口の門を入るとちょうど紙銭を裁断しているところでした。特筆すべきは紙銭の材料が環境に優しい竹でできていること。今では珍しい本物の材料にこだわって作られている紙銭です。
小さな作業室には地元のおばあちゃん3人が紙銭を手作りしています。一枚一枚手作業で金箔に透明の糊を塗って貼り付けていきます。
熟練の手が紙銭の上で巧みに動きます。おばあちゃんは子供の頃からこの仕事を始めて、娯楽もなかった時代、学校が終わるとすぐに工場に来て働いていたのだそう。紙銭の製造過程を初めて見て驚きました。
紙銭の製造作業は非常に細かく分けられており、このエリアでは貼り付けた金紙に特殊な色素を塗り、錫箔を金色に変えていきます。どの工程も手を抜けない大事な作業です。
別のおばあちゃんは忙しそうにカットされた紙銭をイグサで包んでいきます。私たちが手にする紙銭は、このような手作業で作られているのです。
このように手作業で作られた紙銭は、「先祖」たちが喜んでくれるのだそう。価格は少々高くても、品質に優れた金紙は竹南の特色ある文化の一つです!
竹南中港の村にはかわいらしい絵が描かれた壁画がたくさんあって訪れた人の遊び心を刺激します。ぜひ皆さんも海線の様々な魅力を見つけてくださいね。
竹南濱海森遊憩区は苗栗の西側に位置し、北は龍鳳漁港、南は海口里の中港川河口までの全長約5キロのエリアです。ここでは幻想的な湿地や親子の森、休日の森、永遠の森などの森林エリアが設けられています。苗栗の海岸線は大海原のイメージでしたが、地元の人たちも知らないような幻想的なスポットが隠れていました。森林湿地を散策すると、まるで絵の中にいるような、非現実的な感覚になりました。
私の中でサーフィンは、頭城外澳や東部、墾丁など大きな波のある海岸でするものだと思っていましたが、穏やかな苗栗の海岸線にも知る人ぞ知るサーファー憧れのサーフスポットがありました。ここには、とてもアットホームな雰囲気のサーフィン村も造られています。よそからやってきたサーファーたちは、ここの海と過度な観光開発がされていない原始的な風景が残るこの場所をとても気に入っています。穏やかな海と素朴で人情味あふれる人たちによってつくられた、多くのサーファーにとっての秘密基地となっています。
サーフィンをこよなく愛するトニーは、各地を周った末に理想のサーフスポット「休日の森」に移り住みました。ここは商業的な観光地化がされておらず、海の環境も良く生活するのにも適しています。「蔬皮肚皮餐酒館」(Super Duper)というお店を開き、サーファー達が休憩したり食事を楽しむ場所を提供しています。頭城のサーフィンストリートによく似ていて、なんだかサーフボードを抱えて海に走り出したい気分になります。
トニーはここを過度に商業化することは望んでいません。この場所を通じて美味しい食事だけでなく、海洋文化をより多くの人に伝えたいと考えています。
レストラン横のサーフィン村は、廃棄されたサーフボードを使った楽しいエリアになっています。どの場所もサーフィンの情熱でいっぱいです。
ここにはどこを歩いてものんびりとした雰囲気が広がっています。海と調和したライフスタイル、これ以上の幸福はありませんね。
今回の苗栗海線の旅では、沖に立つ22基もの風車を見ることができました。海風が強いため、多くのサーファーがカイトサーフィンを楽しんでいます。様々なマリンスポーツが盛んに行われています。
ここでは一年を通してサーフィンを楽しむことが出来ます。風車を近くに感じながらのスペシャルなサーフィン体験です。
- 住所|苗栗県竹南鎮竹興里竹囲仔
龍鳳漁港は西濱公路に隣接した天然の漁港で、美しい海岸がある以外にも、多くの海産物店のオーナーや業者が魚を仕入れにやって来る場所です。今日はここで魚の競りの雰囲気を感じてみたいと思います。
お昼時、水揚げされた魚が次々と運び込まれ競りの時間を待っています。ここにはさまざまな種類の魚があり、見たことのない魚や、想像を超えるほど大きな魚もたくさん並んでいます。
苗栗スローフィッシュ運動は、魚食文化を理解し、魚を知ることを目指しています。龍鳳漁港を訪れたら、ありのままの魚をより近くに感じることが出来ますよ。
龍鳳漁港では午前6時30分から午後1時まで、卸売業者によって競りが行われます。競りの始まる前に、買い手は欲しい魚を見て回ります。観光客も中に入って見学することができますが、競りが始まる時間になると扉がしめられ、中の様子を見ることは出来ません。私たちは初めて競りを見学しましたが、最初は理解できず、後から魚を買ったお店の方から、どのように競りが行われているか教えてもらいました。
卸売業者はかご毎に魚を取引します。各かごの魚には最低価格が決められており、その価格の呼びかけに入札したい人が手を上げます。卸売業者は非常に速いテンポで値段を上げていきます。予算を超えると手を下げて諦めることも可能です。最後に手を上げていた人が落札し、サインをして落札を確認。代金支払い後に持ち帰るという流れです。
現場に飛び交う声のテンポの速さたるや!迫力満点の競りの様子に大興奮です。ここで競りに参加するのは、ほとんどが鮮魚店や仲卸業者で、皆さん自信満々で競りに臨みます。私たちのような観客もその様子を興味津々で見守ります。
魚を買わなくても、龍鳳漁港は非常に美しい景色が広がる港です。周辺の海域は主に岩礁地帯で、海辺の遊歩道は緑豊かな防風林に囲まれており、散歩や海遊びには最適な場所です。
龍鳳海岸の浜辺で波打つ潮の香りに包まれながら、柔らかな砂浜を踏みしめて海風を感じれば、幸せな海の雰囲気を味わえるでしょう。
今日の夕食は、港のほとりに海の青と白を基調としたテーブルを設置し、心地よくロマンチックな雰囲気の中で豊かな食の饗宴を楽しみました。
夕陽が沈む西の空はすごく幻想的で、黄金色の光が優しくそそぎ落ちる美しい港の夕日を私たちに見せてくれました。普段なかなか見ることのできない夕日に、言葉に出来ないほどの感動を覚えました。
苗栗竹南海線は穏やかでのんびりとした雰囲気に満ちており、苗栗で展開されているスローフィッシュ運動にぴったりです。スローフィッシュは、急速に広まるファーストフードに対抗するためにイタリアで始まった運動です。スローフィッシュ運動を通じて地元の海洋生態を理解し、魚のことや漁法、魚の美味しい食べ方を学び、生態と魚食のバランスを取ることを目指します。海岸線をゆっくりと歩いて、海を深く理解し、ゆったりとしたテンポを取り込んで、スローライフの中に満足と感動を見出しましょう。
さぁ一緒に苗栗海岸を歩きましょう。