崙背郷は思わず足取りをゆるめたくなるようなのどかな町です。広がる農地、乳牛の低く響く鳴き声——その日常には詔安客家の言葉の抑揚や信仰が自然と溶け込んでいます。
ふと、一本の路地に足を踏み入れると、水汴頭崇賢寺で開催されている伝統的な祭典に遭遇したり、詔安客家文化館で静かに語られるエスニックグループの物語に耳を傾けたりと、思いがけない発見があります。
ゆっくりと錦鯉の池へ歩いて行き、陽光にきらめく魚を眺めながら、焼きたての「開口獅花生餅」をひとくちいただきましょう。香ばしくてサクサクの味わいが口いっぱいに広がり、どの瞬間も郷土風情に満ちています。崙背の魅力とは、きっとこの「何気ないひととき」にこそあるのでしょう。旅人にスローライフの美しさをそっと教えてくれる、文化の奥深さを感じさせてくれる、そんな崙背郷ならではの味わいが、そこに息づいています。